乳房再建体験★腹直筋皮弁法

YUKIさん
乳癌&乳房再建手術体験記

乳癌の発見は40歳から続けていた検診からでした。
初めて受けた時再検査の通知が届き結果【乳腺症】と診断されました。
ご存知の通り乳腺症からは乳癌にはなりませんが触った感じがしこりと類似している為毎年受ける事を勧められました。

検診も4回目、2001年6月22日42歳の夏でした。
マンモグラフィ撮影で私の右乳房から異常が発見されました。
外科医の一言
【この白いポツポツとした影が気になりますね】これが私と乳癌との出会いです。

私はしこりから癌が発見されたのではなく石灰化と言う病変からでした。
当然自覚症状などありません、正に毎年受けていた検診のお陰だと思います。

診断は乳癌の初期だと言われましたが、乳房温存は無理だと言われました。
理由は二つ石灰化した細胞が乳房の広範囲に広がっている可能性が高い事と私の乳房の大きさでは温存手術を受けても変形が著しく生じる事からです。
これでは乳房を温存した事にはなりません。

この時期私の乳癌に対する知識は、無に等しかった為命と引き換えに肋骨が激しく浮き出た我乳房を思い描き手術拒否も考えました。
微乳であれこの胸失うくらいなら生きていたくはないと思ったのです。

私に生きる望みを与えてくれたのは勿論家族の願い・支えもありましたが失った乳房を再び取り戻す事が出来る手術がある
と知った時です。
それが【乳房再建手術】でした。
ただこの手術も私の住む地方ではまだまだ熟練された形成外科医が少ないのが現状です。
従って私はこの病院では4人目の患者として乳房再建に望みを託しました。

乳房再建手術は大きく分けて三種類あります。
1、人工乳房埋込法
  A)乳房の形をした人工乳房を埋め込む方法
    B)組織拡張法(ティシュ・エキスパンダー)
2、広背筋皮弁法
3、腹直筋皮弁法

【人工乳房使用での再建】は乳癌摘出手術以外に体の他の部分に傷を付けることなく再建できます。
欠点として人工な物なので壊れる事もあります。そして現段階では保険が利きません。

【広背筋皮弁法・腹直筋皮弁法】は、共に自分の組織を使って乳房を再建する方法で、二つの違いは広背筋皮弁法は背中の筋肉とその上にある皮膚皮下脂肪を移植する方法若い人や出産を予定している人に適しています。
一方腹直筋皮弁法は下腹部の皮膚と皮下脂肪組織を移植する方法です。
二つの方法は胸部の乳房再建による傷跡と背中・腹部に新たな傷を残します。そして手術時間もかかります。

そうそう大事な事を書き添えます。
腹直筋で乳房を再建した場合、「おへそ」の位置が変わります。
下腹部の皮膚を使うためそのまま縫合すると、おへその位置が極端に下に移動してしまうからです。
このような事が起こらないようにする為、本来あるであろうと思われる位置に移動されます。
従って傷は胸と腹部そしておへその三箇所に残ります。

出来上がった乳房は時間が(年単位ですが)経つに従って自然な感じになります。
自家組織を使った事によりこの手術は保険適応となります。

ここからは私の実際に受けた腹直筋皮弁法についての記録と感想です。

「入院中 ★手術後の事」
手術時間は癌摘出手術が3時間引き続いて乳房再建手術に入りました。
再建手術は6時間近くかかりました。
合計するとかなりの時間ですね。
手術時間が長いほど感じるようですが、術後は寒さを堪えるのに必死でした。
「寒い!痛い!寒い!」と叫んでいたようです。
その時思ったのはもう二度とこんな手術は、受けるものかと思いました。
でも「ひにち薬」のせいでしょうか、再建された乳房に愛着を感じてくるからでしょうか。
あの時の痛みや恐怖は時と共に薄れました。

病院によって治療方針も違いがあると思いますが、腹直筋での再建を受けた場合は、腕のリハビリテーションを直ぐには行えません。
数日間はベッドに仰向けに横になったまま寝返りすら打つこと出来ません。と言うか痛くて体を動かせないのが現状です。
この時期あるとありがたいのが体の下に敷くパッドです。
お尻と背中で二つあるとグッ!そして足側のベッドの角度を上げてもらうととても楽です。

始めは固定されたベッドの角度も日が経つに連れ30度から60度そして90度まで上げられてきます。
その為食事は始めのうちは誰か介護の人がいないと一人では食べる事が出来ません。
特に30度では膳の中に何が入っているのか見えません 汁物だとこぼしてしまいます。

術後8日目尿のバルーンが外されました。
この時の開放感はひとしおで、これが取れただけでも健康体になった気分です。
そして食欲も出てきました

術後9日目抜糸が行われ、自分の胸を見ようと思えば見ることが出来ます。
乳房があっても乳頭がない・・・ちょっと複雑な気持でした。
この時期から病室を自由に出歩く許可が下りました。
些細な事ですが身の回りの事が一つ一つ自分の力で出来る事に感謝しました。

「退院後」
入院期間は17日間でした
正直言って退院してきた後の方が、精神的に落ち込むのです。
腹部を広範囲に縫われている為、ひきつった状態でついお腹を抑えてしまいます。
前かがみに歩くその当時の私を見て夫は妊婦のようだと言いました。
意識しているのではないのですが、ついお腹をかばってしまうのです。
くしゃみも大変お腹に響きます。

家事に関してもつい今まで通りにしようと気張るけれど実際は体が付いてきません。
リンパ郭清を受けた腕は上手く上がらないし直ぐ疲れるしで涙する事も度々でした。
無意識のうちに術前の自分とつい比べているのです。
焦らなくても体は徐々に回復してきます。
私のように無駄な神経は使わない事です。

乳房とお腹の縫合跡は月が経つ毎に徐々にですが薄くなります。
これは外科医が縫合したのではなく形成外科医の腕の差でしょうか。
腹部の方は一年後には殆ど目立たなくなりました。
もっと月日が経てばより薄くなるのでは?
乳房の方は腹部ほど回復は早くはありません。
わずか数十センチ下の腹部の皮膚なのに胸に移植されると色の違い分るからです。
私の場合は白地の胸部に黄色味がかった乳房があるって言う感じです。

「乳頭・乳輪の再建手術」
乳房を再建して治療を終える人もいますが、私はその後乳頭・乳輪の再建そして色つけも行いました。
時期は再建した乳房が落ち着いた4ヵ月後です。

方法は局所皮弁法と言って作られた乳房に局所麻酔をして、乳頭を作る位置の皮膚を半星型のように切り、その皮膚をめくり上げて乳頭の形に縫い合わせるのです。
手術は外来で済み時間も30分程度です。
この方法では乳頭・乳輪に色がありませんからいれずみを用いて健側に近い色に仕上げます。
一度のいれずみでは十分な成果が出ない為2〜3回受ける事になります。
時期は乳頭を再建してから4ヵ月後でした。

因みに他の方法としては、手術を受けていない方の乳頭や乳輪を半分移植する方法。陰部からの皮膚を移植する方法があります。
私の形成主治医は局所皮弁法が、患者の体に一番負担を与えず行える方法だと説明してくれました。

局所皮弁法で作られた乳頭は残念な事に作られた時より小さくなります。
これは体が持つ治癒力が働くせいで再建された乳頭は体が傷と判断し元に戻ろうと働きかけるからです。
それを防ぐ為に術後保護テープで固定しますが再建された時の大きさを維持する事は出来ませんでした。

いれずみ治療は現段階では治療中です。
通常いれずみは日が経つと薄くなると言われていますが、私の場合は色素が濃く出る体質の為、いれずみを受けて4ヶ月経っても色の変化はなく濃紫のままでした。
そこで二回目のいれずみを受ける前にレーザーを当てて色を薄くする治療を受けました。
これにより少しでも健側の色に近付く事を期待しています。

ここまでが私が受けた再建体験記です

終わりに総合的な感想ですが、再建手術を受けたことに後悔はありません。
特に癌摘出後続いて再建手術を受けたお陰で大きな手術が一度で済みました。
また乳房を失ったと言う喪失感が少なく退院後の日常生活、特に精神面での復帰が短期間で済んだ気がします。
服装も術前と何ら変わりなく過ごせました。
ただ元の乳房と同じにはならないこと覚悟してください。

形成外科医の話では再建手術が存在する事を知らない女性がまだまだ沢山にいると聞きました。
手術を希望する、しないかは個々違いますが、少なくても失った乳房を取り戻す事が出来るこの手術を知らずに済んでしまう事だけは貴方に起こらないことを願います。