「愛する人が癌になったとき」

みみすけさん
[愛する人が癌になったとき]
☆緩和ケア病棟に入院します☆
夫は8月に右肩と腰に骨転移、9月に3箇所脳転移しているのがわかり、9月にはガンマナイフも照射しましたが今一つ効果現れず。
でも、リンデロンのおかげか食欲も戻り、10月の半ば頃からはかなり元気に動いていました。咳止めはリン酸コデインからMSコンチンへ、量も徐々に増えてはいたのですが、かなり良い状態が続いていたのですが。

今は骨折の痛みとの戦いです。ほんの少し、むせただけでも激痛が走るようです。ましてや咳なんてとんでもない。
なんとか痛みだけはとってあげたいので皮下注射でのモルヒネ投与をすることになりました。
これで少しは楽になるといいのですが。

できれば在宅でずっとやっていきたいと思っていたのにこういう形で入院するのはとても残念です。
でも、緩和ケア病棟はとても居心地が良さそうで何より痛みのコントロールをきちんとしていただけると思うだけでほっとします。

なんとか来月の出産まで頑張って欲しい。
せめて顔だけでも見て欲しい、と神様に祈っています。
赤ちゃんはとても元気で私が夫に付き添っている間中ぽこぽこと動いて私を励ましてくれます。
この子がいてくれて本当に良かった、心から感謝しています。
夫も子どもも頑張っている、私も頑張ります。

☆緩和ケア病棟より1☆
夫の入院生活もはや一週間になりました。
緩和ケア病棟に移ってから、みちがえるような待遇のよさに少々戸惑いぎみながらも、昨日からは痛みもずいぶん和らぎ食欲もほんの少しでてきたようです。

こうやって何も他のことは考えず夫の傍にいることができる状況にとても感謝しています。夫の両親・職場の方・病棟のスタッフ・私の実家の家族・友人に感謝します。
これからのことは全く予測できませんが。。。
きっと神様が見てくれると信じて。。。

☆緩和ケア病棟より2☆
夫が入院して半月経ちました。最初の一週間こそ、痛みのコントロールが上手くいかずにいらいらしましたが、今ではモルヒネの持続皮下注入がうまくいって、ほとんど痛みもなく快適にすごしています。病院の食事ではもう足りないので毎日義母や祖母が作ったお惣菜を少し足してます。
唯一、便秘で苦しみ、ずっと看護婦さんにとっていただく毎日でしたが、昨日から自力でなんとかすることができるようになり、横になっていなければいけないことを除けば病人らしいところはどこもありません。2日前の病棟でのクリスマス会にもベッドに横たわったまま、参加させていただきました。
入院当初のことを思うと嘘のようです。

私が仕事をしていないこともあって、ほぼ24時間ずっと一緒にいられるので、夫の身体的ケアをほとんど一人でしています。
スタッフの方は”もっと頼っていいのよ”と皆さん言ってくれますが、夫のためにできることがあるのが嬉しいんです。どちらにしても来月ちびちびが産まれたら、夫にこれほどまではかかりきりになれないでしょうし。折れた骨がくっついたら、できれば退院したいですし。

☆無事出産しました☆
夫は私の出産に立ち会うことを強く希望していますので、私は夫の入院先でお産をすることにして、緩和ケア病棟と産婦人科で連携を保っていただくことになりました。何しろ初めてづくしのことで病院にも多大な迷惑をかけることになりますが、希望をかなえていただけることを嬉しく思っています。

2月5日3時58分、3688グラムの女児を無事出産しました。
母子ともに健康で、促進剤なども一切使わない自然分娩でした。

子供には”遊”と夫が名づけました。
「いつも明るく前向きで、人生を楽しみ、自分が幸せであることを忘れないように」との思いを込めたようです。

☆ちょっぴり泣き言です☆
ちょっぴり泣き言を書いても良いですか。

昨日、夫と二人夜中の3時まで泣きました。

夫は私の出産の2,3日前、とても憂鬱そうで一日中ぼーっとしていました。
私も気になりつつも自分のお産を控え、なかなか彼の気持ちを聞き出せずにいました。

昨日、夫と話していて夫が「夜眠る前、このまま目が覚めなければ良いなって思う」って言ったんです。
すごくショックでした。
「毎日つらい?」って聞いたら「少し」って。。。

「お産の前ブルーだったのはどうして?」と聞いたら
「。。。もう長くないなあって思い始めて」
「自分の身体の状況でそう思うの?」
「うん」

私には何も言えませんでした。
ただ泣くことしかできなくて。
彼がそう思うということはきっと彼の体の中で変化が起きていて、それを実感しているんだと思います。
一緒にいる私も、退院前からそれを感じていました。

つらいです。
私を残していかないでと叫びたい。
でも、それを言ったら夫が悲しみますよね。
でも、つらい。寂しい。こわい。こわいんです。

ごめんなさい。病気と闘っている当事者が一番つらいですよね。。。
そう思ってなるべく気持ちを出さないようにしていたんですけれど。

私は夫に対して何か言葉をかけるべきなんでしょうか。
かける言葉が見つからなくて。。。
自分の思いが先走りそうで。

☆鬱でしょうか☆
夫が退院して一ヶ月と一週間が過ぎ、昨日は夫の体調が良く近くの公園まで夫と娘と犬(ピレニーズ1才)を連れてお散歩しました。娘と犬とどこかに行きたいと夫が言っていたので願いがかなって嬉しかったです。天気も良かったし。

娘が夫にエネルギーを与えてくれているのでしょうか、夫の病気の進行からは考えられないほど、夫の状態は安定しています。娘のお守りはもっぱら寝ている夫の役目です。
(夫は右大腿部の骨転移がかなり進んでいますのでトイレと部屋の移動以外はずっと横になっています)親子で過ごせる穏やかな時間を大事に大事に過ごしています。

夫とは毎日たくさん話をしています。いままでのこともこれからのことも。
もちろん夫自身の死についても。今の私たちの間にタブー視している話題はないと思います。
愚痴を出した後から夫のすべてを受け止める覚悟ができました。
夫とたくさん話すことで私自身も落ち着いて現実を見つめていられるのだと思います。

☆夫再入院しました☆
夫が今までにない呼吸困難におそわれ、救急車で元の緩和ケア病院に戻りました。
肺がつぶれたかと一瞬思いましたが、なんとかそれは免れたようでモルヒネを持続皮下注入に切り替え、増量することで現在は少し息苦しさもおさまったようです。
近くの公園に愛犬と遊を連れて花見に行ったその日の夜でした。

入院したその夜は主治医から
”一週間単位で考えてください。もしかすると、一週間持たないかも。。。”と言われましたがなんとか落ち着き、昨日今日は穏やかな顔つきになりました。
”もう楽にしてくれ。死ぬまで眠っていたい”と言う夫を見ていると楽にしてあげることもできない自分がはがゆく、それでも
穏やかに過ごせる時が少しでもあると嬉しく、頑張ってくれる夫に本当に感謝しています。

とりあえず一週間は入院して様子を見て退院するかどうか主治医と相談して決めることにしました。幸い、遊も24時間一緒にいることを許されましたので、親子でいるなら自宅でも病院でも夫にとっては変わらないようです。

遊は夫が救急車で運ばれるときも、じぃっと夫の顔を見て黙って私に抱かれていました。病院でもほとんど泣きません。
いるのかいないのかわからないほどおりこうさんにしてくれるこの子を見ていると、すべて事情をわかっているのかなと思ってしまいます。神様はやっぱりいるのかな。。。

夫と遊がもっともっと思い出を作れるよう、夫が穏やかに過ごせるよう頑張りたいと思います。

☆夫再び骨折しました☆
19日の夜中、とうとう夫は右大腿骨を折ってしまいました。
それをきっかけに、ふかい咳がひっきりなしに出るようになり、咳が出るたびに骨折部に激痛が走り、硬膜外ブロックやモルヒネの増量で痛みや咳を抑えようとしても、うまくいかず、モルヒネの量を倍に増やし(700cc)、ドルミカム(鎮静剤)を投与することで眠らせることにしました。

夫は呼吸困難の中、ずっと眠っていたいといい、結局それ以外夫を楽にしてあげられなかったので、家族も納得したうえで、お別れをしました。
もしかしたら、このまま眠ったままお別れになるかも、と言われたからです。

でも、夫は帰ってきました。目を覚ましたんです。
昨日の夜中、夫の呼吸は不規則になり、私の目から見てもとても厳しいのがわかりました。枕元にずっと座って見ていたら夫がいきなり目を覚ましたんです。びっくりしました。
”夢を見ていた。自分が死んだ夢を見た。”と目を覚まして言いました。
”やっと、死ねたなあって思った。やっと楽になれると思ったけど、
死んでもみみすけたちのこと忘れられんかった。死んでも忘れられないんだなあと思ったら、つらくて。。。”
”少し、意欲が出た。もう少し抵抗してみる”とプリンをしっかり食べたんです。
今日も4,5時間ごとに目を覚まし、そのたびにプリンやおかゆを口にしています。

夫の力強さに本当に本当に驚き、感動し、感謝しています。
私たちのお別れには、本当に長い時間が必要なんだと改めて感じました。そしてその時間を作ってくれているのは夫自身の精神力ということも。

今も夫と二人で話をし、夫はまた眠りにつきました。
もし再び目が覚めることはなくても、思い残すことはありません。
もうちょっと頑張ると言ってくれた夫の言葉で充分です。

☆夫旅立ちました☆
5月4日の午前1時30分、私と手をつないだまま、夫は息を引き取りました。やすらかでした。
右大腿骨を骨折して2週間、夫から笑顔が消えて2週間たっていました。夫は骨折する直前、「死ぬ2週間前までは笑っていたい」と言っていたので、約束を守ったんだと思います。
1週間前、夫に命が短いことを伝え、夫はみずから薬で眠ることを選びました。その前にふたりでゆっくり語り合い、結婚式での誓いの言葉をもう一度読み上げ、録音しました。
「喜びも悲しみも互いに分かち合い、一生寄りそって生きていくことを誓います」
誓いは守られたね、と二人納得してお別れをしました。
遠距離結婚をしてるのと同じ、寂しいけどつらくはないです。
これ以上ないというくらい精一杯二人で頑張ったから。

昨日葬式も終えました。あらゆる雑務は夫の両親が一手にひきうけ私はただただ夫のそばにいて夫のことだけを思い、夫の思いをみなさんに伝えることができました。本当に幸せですね。

夫は本当に本当に、最後の最後まで頑張りとおしました。
夫として、遊の父親として本当に尊敬できるすばらしい人だと思っています。そして、その夫を支えてくれた両親、友人あらゆる人々に感謝しています。感謝の気持ちでいっぱいです。
CTMLの方々もたくさんの応援・励ましをありがとうございました。

最後に夫へ

けんちゃん、愛してくれてありがとう。
守ってくれてありがとう。
生き抜いてくれてありがとう。
たくさんの時間をありがとう。
けんちゃんの魂はきっとぴかぴかになってるでしょうね。
また会えるのを支えに、私も遊もがんばるよ。
ほんとにありがとうね。

みみすけより。